018.アパートの玄関で転倒!これって労災?

Q:店長です。ある日、スタッフが通勤途中に滑ってケガをしてしまいました。どうやらアパートの玄関を出て階段を降りているときに滑ったようです。この場合、労災の扱いになるのでしょうか…。

A:店舗(会社)が労災保険に加入していれば、通勤災害として認められる可能性があります。一軒家の場合は玄関を出るまでにケガをしても通勤災害とはなりません。

こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762

 

<解説>
今回はスタッフが出勤をしようとして、住んでいるアパートの玄関を出て階段を降りようとしたときにふいに滑って転んでしまった…という、なんとも痛ましい出来事が起こった場合の対処についてです。こういう場合にいわゆる労災保険の給付を受ける対象になるのか、という観点で見ていきます。

【「労災」とは何か?】
まず、本題に入る前に「労災」とは何か?ということについて触れましょう。労災は「労働災害」、あるいは「労働者災害補償保険法」の略語です。簡単に言えば、勤務中にケガをしてしまったときや障害が残ったとき、業務が原因となって病気になった場合などに、国から保険給付があります。一度この連載でも触れましたが、スタッフを一人でも雇用した場合には、事業所として必ず入らなければならない公的保険の一つです。保険料は全額店舗側の負担で、コンビニエンスストアの労災保険料率は3/1000(令和4年5月時点、変更の可能性もあります)。保険料の計算にあたっては、1年間に払ったスタッフ給与の総額がベースとなります。仮に年間で2,000万円の給与を支払った場合、労災保険料は6万円です。

【通勤も労災の対象?】
さて、ここまでの内容を踏まえると、通勤途中のケガは勤務中に発生したものではないので、一見関係なさそうに思えますね。ですが、実は労災保険は通勤途中、あるいは帰宅途中も、条件さえ満たしていれば一定の補償があるのです。冒頭のQのようにアパートに住んでいるスタッフが、玄関を出てアパートの敷地を出るまでの間に滑ってケガをした場合、その敷地は不特定多数の人が往来できる場所であることから、通勤の途中であるとみなされ、通勤災害の対象となります。

【どのような補償があるか】
では、もしアパートの玄関を出て、階段を降りる際に滑って転んでしまった場合、労災保険ではどのような給付が受けられるのでしょうか。
ケガの状況にもよりますが、まず、病院に行った際に労災として診てもらうことで、その診療代が「療養給付」として給付されます(一部負担金200円のみ初回に負担あり)。つまり、スタッフの立場としては診療代を払うことなく治療が受けられるというものです。ただしこれは、労災指定病院で診てもらう必要があります。労災指定病院以外では、いったん診療代を立て替え、その後労災請求することでかかった診療費用が返ってくることになるため、あらかじめ店舗近くの労災指定病院を調べておくといいかもしれません。
その他、例えば足の骨折など、ケガでしばらく仕事を休まなければならない場合には、お休みしている間の生活補償として「休業給付」が出ます。休業給付の額はイメージとして、平均賃金(過去3ヶ月の給料の平均)の6割、プラス休業特別支給金として平均賃金の2割が給付されます。さらに、もし1年6ヶ月を経過してもそのケガが治らない…という場合には、傷病年金、障害が残った場合には障害給付というものも出ます。このように、労災保険の給付は手厚いものになっています。
実際に事故が発生したら、専用の書式を使って病院などを経由して行う場合、直接労働基準監督署に請求を行う場合がありますが、速やかに行うことが大切です。ただし、特に通勤時や帰宅時は、寄り道をしてしまうこともあります。通常の出勤・帰宅ルートから大きく外れて寄り道をしてしまった際にケガをしても、通勤災害として認められない場合もあるので注意が必要です。

【通勤災害とならない場合も…】
ちなみに、これが一軒家に住んでいて、玄関から公道に出るまでの間に同じく滑ってケガをした場合は、通勤災害にならないのです。また、集合住宅でもセキュリティがしっかりしたマンションの場合、マンションの総合入口を出るまでの間にケガをしてしまった場合は、通勤災害にならないこともあります。ともに理由は、自宅の玄関から外に出るまでの間のルートは、誰もが自由に出入りできる状況ではないからです。

【事故を発生させないのが第一】
これまで、通勤災害にかかる労災請求などについて見てきましたが、最も大事なことは、こうした事故を発生させない工夫でしょう。例えば、冬ですと雪の日にはスタッフに気をつけて出勤するように伝えるだけでも意識は高まりやすくなります。業務中の事故もそうですが、普段の働きかけや意識でも十分防げますので、各店で対策を立ててみてください。

017.店長が競合店へ転職!これっていいの?

Q:オーナーです。退職を予定している店長が、どうやら競合店に転職する模様。競合に転職するのはダメだと思うのですが、食い止めるにはどうしたらいいでしょうか。

A: 職業選択の自由(日本国憲法第22条)があるので、競合店へ転職することを完全に防ぐことはできないでしょう。ただし、対象者や年数、場所など合理的な範囲で一定の条件をつけた競業禁止の規定を定めることで、有効となることもあります。

こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762

 

<解説>

自店舗の店長が仕事を辞める、と思ったら、なんと別チェーンの店舗(以下、「競合店」)に店長待遇で行くことになっていた…という話は、実際にも多々起こります。こうしたときに、競合店への転職を阻止、もしくは制限することができるのか?というのは、多くのオーナーにとって気になるところではないでしょうか。それでは、実際にどう対処していけばよいかを見ていきます。

そもそも、なぜ競合店(競合他社)へ行くことがタブー視されやすいのか、ということですが、理由はいくつかあります。例えば、「店舗(現場)のノウハウを持って行かれることを避けたい」「お客様を持って行かれてしまい、売上や利益が少なくなる」「仮に円満退社ではなかった場合に、自店舗の悪口を言いふらされて、こっちに損害が発生するのが困る」などです。コンビニエンスストアは店舗システムが比較的誰でも動かせるように設計されているので、それほど特別な技術を必要とする仕事ではありませんが、それでも自分たちの努力を他社で生かされることを想像すると、あまり気持ちの良いものではない…と思う方もいらっしゃるようです。では、そうした状況において、実際に競合店への転職を制限することは可能なのでしょうか。

 

【規則なしだと競合店への転職は阻止できない】

まず、競合店への転職について何も規定を設けていない場合は、仮に自店舗の店長が競合店に転職しても、ダメとは言えないでしょう。これは、日本国憲法の第22条にある通り、職業選択の自由が認められているからです。
職業選択の自由とは、

「何人も、公共の福祉に反しない限り、移住、居住、移転及び職業選択の自由を存する」

という内容ですが、公共の福祉、すなわち違法行為を行うことや他人に迷惑をかけないことを前提として、職業を自由に選ぶことができる、あるいは営業ができるのです。だからこそ、自店舗を辞めるときに何も規定がなければ、人やノウハウなどの流出を食い止めることはできないのです。

 

【では、規則があればいいのか、というと…】

それでは、「当店ではノウハウがもれると困るから規則を設けよう」と、『一度辞めると一生競合店には転職できない』という規定を設けた場合、有効になるのでしょうか。正解は、NO。これも、職業選択の自由が前提です。この決まりは、それを退職者に対し直接的に制限することに繋がってしまうため、この決まり自体が無効と判断される可能性が高いのです。また、退職時の手続きで、退職者に「私は退職後、競合先に転職しないことを誓います」という文書の入った誓約書にサインをさせたとしても、その部分が無効となることもありえます。この内容は、過去にいくつか裁判で争われた事例もありますが、度の行き過ぎた制限は無効となっています。

 

【限定的、必要最小限にとどめる】

あらかじめ、就業規則や雇用契約書などで、競合店へ転職することを禁じることは、決してダメなことではありません。ただし、先のように極端な制限は、退職する人の人生を制限してしまうことから無効となってしまいます。では、そのさじ加減はどこまでが許されるのでしょうか。

例えば、1年ないし2年という期間を定める(これも長すぎてはダメ、せいぜい2年まで)、場所を限定する(例:同地域と隣地域の競合店は転職禁止、など)、対象者を限定する(店長職については一定の制限を設ける、など)といった限定的な規定であれば、有効となる場合もあります。争いにならなければ有効、無効かどうかの判断は付きにくいですが、競合店への転職による損害発生防止には一定の効果を発揮するでしょう。また、就業規則や雇用契約書で先述のような規定を定めておいたり、契約書や誓約書に退職者がサインをしたりしたとしても、その規定自体が法律で守られているものではありませんので、あくまでも退職者が退職後にトラブルを起こさないための抑止効果として捉える必要があります。ただ、そうした制限を設ける代わりに、金銭面などで待遇を良くする代償措置を取ることも一つの検討事項となり、退職者が受け入れやすくなることもあります。

 

以上、競合店への転職制限について見てきましたが、何も制限しないなら、転職されてその後トラブルになっても、自店舗には有利に働かない可能性があります。そのため、一定の規定は大事ですが、本来は皆が職業を自由に選択し、お互いに助け合って行ける業界になっていくことを期待したいところです。

016.スタッフ紹介制度導入のポイントは?

Q:店長です。人材不足に対応するため、少し前からスタッフによる紹介制度を導入することになりました。紹介した人が採用された場合は一定の報奨金を支払うことにしたのですが、採用した人がすぐに辞めてしまい報奨金が損になってしまいました。法的部分の注意事項も含め、有意義な紹介制度運用のアドバイスを頂けないでしょうか。

A:損や返金トラブルにならないよう、紹介採用後一定期間経過後に報奨金を支払うような仕組みを入れて導入する、紹介した側だけでなく、紹介された側への配慮も必要でしょう。

こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762

<解説>

人不足に悩む店舗も多い中、一つの解決策になりうる「スタッフ紹介制度」。現在店舗で働いているスタッフに知人・友人を紹介してもらうことで質の良い人員を確保できるチャンスが高まり、求人にかかる費用負担を軽減できるというメリットもあります。

スタッフの紹介によって採用が決まった時には、紹介したスタッフ、あるいは採用されたスタッフにも報奨金を出す仕組みにしているところもあります。スタッフにとっても取り組みに熱が入るところですが、紹介によって入社したスタッフが必ずしも定着するわけではありません。もし、店舗として採用時に報奨金を出す仕組みにしていると、定着せずすぐに辞めてしまった場合に、得るものはなし、お金だけが出て行くということになり、店舗としては損です。さらに、そこで「定着しなかったから報奨金を返せ」などとスタッフに言ってしまうと、トラブルになるのは必至です。

そこで今回は、トラブルにならないスタッフ紹介制度運用のポイントを見ていきます。

まず、法的な解釈としてこの制度が問題なく運用できるのか、ということについてお話ししますと、職業安定法という法律で「労働者の募集を行う者に対して報酬を与えること」は原則禁止されています。これは、労働基準法上の中間搾取に当たるからです。しかし例外として、自社のスタッフが募集を行い、そのスタッフに対して賃金という形で紹介報酬を支払うことは認められています。要は、会社などの「業」として紹介事業を行う場合は許可を受けない限り法律違反となりますが、そうでなければ常識的な範囲である限り問題はない、ということになります。なお、労働局としてはこの募集活動も従業員職があっての活動なので、報奨金は労働の対価として支払う「給与所得」としてほしいという指摘があります。手数料の支払いでも法律には触れませんが「雑所得」扱いとなること、年間で20万円を超える場合は確定申告が必要となることから、給与の位置づけとしたほうが良いとされているようです。

【紹介制度運用の3つのポイント】

①日頃から声をかけておく

まず、「身の回りで仕事を探している人がいたら紹介してください」という言葉は、制度として本格的に行う場合でなくても常日頃からスタッフに声をかけておくと良いでしょう。スタッフの知人は、例えば同じ学校や地域に住んでいる人であることも多く、スタッフも自分の知っている人が仲間として加わることで安心感が生まれることもあります。もちろん、紹介してもらった場合でも、面接などの場でしっかりと店舗のコンセプトに合うかどうかの確認は必要です。しかし、労力や時間をかけて探し、紹介してくれたことは間違いないので、感謝の気持ちはしっかり伝えましょう。

②制度をしっかりと構築しよう

そして、もし報奨金を支払うなどの制度として導入を考える場合は、その仕組みをしっかりと構築すること、決まった仕組みは明文化し、スタッフ全員と共有することが大切です。なお、支払い方は現金でも商品券でも給与所得として扱うことになりますが、必ず就業規則への記載を行い届け出ること、さらにスタッフ向けの「紹介制度導入の流れや手引き」、氏名や経験などを簡単に書ける「紹介用シート」、あとは店舗側で管理できる「紹介された方のリスト」を用意しておきます。

紹介制度導入の手引きについては、制度開始時期、使うツール類、採用までのプロセスや採用可否の判断までおおよそかかる日数、報奨金の有無や支給の要件・タイミング、どういう人と一緒に働きたいかの条件などがあり、その他必要に応じて注意事項などを書いておきます。

③報奨金の支払いタイミング

報奨金ですが、スタッフからの紹介を受けて、無事に採用!となったタイミングで支給するところもありますが、その後定着せず、1ヶ月もたたずに退職…ということにもなりかねません。そのため、例えば採用後1ヶ月以上勤務をしていると判断できた際に支給する、というルールにしておくと良いでしょう。この期間は必ずしも1ヶ月でなくても構いませんが、定着するまでには少なくとも給与の一支払い期間をベースに考えておきましょう。

 

以上、スタッフ紹介制度について見てきました。もちろん、通常の採用活動も大切ですので、並行して行っていくと良いでしょう。

015.スタッフ同士の仲が悪化!そんなときどうする?

Q:店長です。日勤スタッフのAさんとBさんの仲が悪くなり、会うたびに言い合いになるため、お客様や周りへの影響を避けるべく出勤日を分けることにしました。しかし、その話を両名にすると、「なんで私が(シフトを)移動しなければならないんですか?あっちが動けばいいじゃないですか」と譲りません。気づけば、周りを巻き込む大きなトラブルに発展していました。こういう場合、どう対応していけばいいのでしょうか…。

A:小手先の解決策では解決しない問題です。まずは早期解決をはかるために、Aさん、Bさんの状況をヒアリングし、本当の原因を見つけましょう。

こんくり株式会社 https://con-cre.co.jp/
MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762

<解説>

コンビニエンスストアは、複数人の力の結集で運営されています。完全な家族経営でない限り第三者が集まる空間ですから、中にはどうしても相性が合わない、という人間関係も出てくるでしょう。今回は、そうした場合の対応方法について見ていきましょう。

まず、これを「対岸の火事」と思わないことが重要です。多くの他人が一緒に働いているので、「ウチはそんなケンカなんてないよ、大丈夫だよ」「みんな仲がいいから心配ないよ」と思っていても、知らないうちに関係のほころびが生まれていることもあります。もちろん、不仲が起こらないように、採用の際に既存スタッフとの相性を配慮したり、普段からコミュニケーションをしっかり取っておく、店舗の目標や方向性を伝えたりするアクションも大事です。しかしここでは、実際に不仲の現象が起こった場合の対応を考えていきます。

 

【不仲が発生した際の対応のポイント】

①放置しない

スタッフ同士の関係性が悪化していると気づいたら、放置せずにまずAさん、Bさんお互いの話を聞くことからスタートしましょう。初動が遅れると、その分トラブルも悪化しやすくなります。

 

②「なぜ?」「どうして?」という聞き方はタブー

AさんやBさんから事情を聞く時に、使ってはいけない言葉があります。それは「なぜ?」「どうして?」、英語でいうと「Why?」です。例えばAさんに対し、「どうしてBさんにそういう言い方をしたのかな?」という質問をした際、Aさんは責められているように感じるからです。また、それに対しAさんが言い訳を始めてしまう可能性もあります。

もちろん、受け取り方はそれぞれですが、少しでもその可能性を減らすために、「Why?」ではなく「What?」で質問をするといいでしょう。「Bさんにそう言おうと思った理由は何ですか?」と言うことで、Aさんの本当の理由を導き出しやすくなります。

また、初めからマイナスの話をすると、お互いの気分もあまりいいものではありません。最初に、いつも仕事をしてくれていることへの感謝や労いの言葉からスタートしましょう。もし、スーパーバイザーや他の人が仮にAさんを褒めていたことがあったとしたら、「この前、スーパーバイザーの◯◯さんがAさんのことをすごくしっかりとお客様対応していたと褒めていたよ」というように、第三者の評価を伝えることも良いでしょう。

 

③安易に小手先の解決策で手を打たない

質問のように、「では、2人を会わせないのが一番!シフトを動かそう」とか「クビにしよう!」などと、経営者や責任者の都合で安易に解決をはかろうとしないことも重要です。不仲の問題は、きっかけはあるにせよ、原因を追求するのは難しいものです。AさんもBさんも、どちらも自分は悪くないと思っている場合に、どちらかが不利益を被る形となると、そこから二次トラブルに発展する恐れがあります。

労働条件の不利益変更を伴う場合は、合理的な理由が客観的に必要です。例えば、AさんとBさんのトラブルは明らかにAさん一方に否があって、ヒアリングの結果、Aさんも反省し、なんとか解決したいと考えている場合や、お互いがシフトを移動させても続けていきたいという合意が取れた場合でなければ難しいでしょう。これも、いきなり提案するから質問のようにこじれてしまうのです。

もしかしたら、他にもいくつか方法があるかもしれません。例えば、AさんとBさんの仲を取り持ち、互いの意見をしっかりと聞き入れ、仕事に反映できそうであれば、それをルールとして設定することもできるでしょう。

最悪のケースはAさん、Bさんのどちらか、あるいは両方が辞めてしまうことです。また、辞めさせるとなる場合も店舗と本人の双方にわだかまりが残る形となってしまうため、時間をある程度費やしてでも、確実に対応することを検討してください。

 

【まとめ】

相性という避けようのない課題もありますが、人間関係の悪化に対する対応や対策は、法律論というよりは、コミュニケーションや仕組みの改善で快方へ向かう場合も多くあります。最もよくないのは、経営者や責任者が、我関せず、と問題を放置してしまうこと。最初は当人たちの問題であっても、いつの間にか店舗や企業全体に責任が及んでいることもあるので、火種の小さい早期に対応しましょう。