026.○○手当は残業代計算の基礎に入りますか?

Q:オーナーです。店長には店舗運営を任せているということで「店長手当」を基本給とは別に毎月つけています。モチベーションを上げて頑張ってもらいたいのと、残業代をあまり多くは払えないので、手当で調整をしているのですが、店長から「残業代をちゃんと払ってください!」と言われました。どこがダメなのでしょうか?

A:業務遂行の対価として払う手当の額は、基本給とあわせて残業代を計算するときの基礎となります。基本給とわけて「◯◯手当」を作っても、残業計算時に除くことはできないため、注意しましょう。

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<解説>
「◯◯手当」は、基本的に一定の条件を満たしたスタッフに支給するものです。例えば、Qのような「店長手当」。マネージャーや責任ある立場に就くと「マネージャー手当」「役職手当」など、名称はさまざまですが、一定の手当をつけるところが多いようです。また、アルバイトスタッフに対して、たとえば発注担当者には「発注手当」をつけるところもあります。
あとは、年末年始に勤務したスタッフに対する「年末年始手当」など。中には、一定の条件において借家で生活するスタッフへ支給する「住宅手当」や扶養する家族がいるスタッフに対する「家族手当」など、業務には直接関係はないものの、手当の支給対象にしているところもあるようです。
これらの支払い方法は、月給の人であれば、まとまった数千円〜数万円単位の手当になりますし、時給であれば、基本時給に上乗せをする形で計算をすることが多いです。こうした手当をつけることによって、スタッフが「責任ある仕事を任せてもらえて、かつ給料も上乗せでもらえる」と、仕事や家庭でのモチベーションアップにつながり、さらに成長していくきっかけとなるため、手当は有効に使うと良い影響があります。しかしその反面、多用すると管理する側が大変になってきます。その最たるものが、「残業代の計算」です。

【業務関連の手当は基本給と同じ?!】
それでは、手当を設定する際の注意点を見ていきましょう。

①手当を増やしすぎないよう注意
どういう条件のもとにつける手当なのか、を整理して有効に活用できる程度の種類にとどめましょう。「発注手当」(発注担当者に対して)、「育成手当」(スタッフ育成担当者に対して)など、特定の業務に対して設定する場合は、本当に別途手当をつけるべき業務なのか、をしっかり考えて実行に移すようにします。たとえば、「レジ手当」「納品手当」「トイレ清掃手当」「油交換手当」など、各業務で手当があったらどうでしょうか…。それ自体が悪いことではもちろんないですが、煩雑になりますよね。
また、社員に多い「店長手当」「役職手当」は、役割でまるっと設定できるので便利だ!と考えるオーナーも多いですが、これもなんとなく設定してしまうのは禁物。例えば店長手当の場合、何が店長業務なのかを明確にしないまま手当をつけると、スタッフと同じ仕事しかできない(店舗の数値管理、人員管理ができない)店長がいても同じ手当を支払うことになり、支給する本来の意味が薄れてしまうでしょう。

②残業代の計算に入れるものと入れないものがある
残業代。オーナーや経営層の方からすると、できれば最小限にとどめたいものですよね。今回のQの回答部分ですが、基本給(基本時給)に乗せる「◯◯手当」が“業務に対する対価”である場合、基本給と合計して、残業代の計算の基礎としなければなりません。
時給の例でいくと、時給1,000円のスタッフに、発注手当が100円ついたとします。この場合は、1,100円が残業代の計算の基礎となる、ということです。残業代は法律上1.25倍で計算することになりますので、1,100円×1.25=1,375円が、残業時の時給となります。残業代計算においては、俗っぽい言い方をすると「◯◯手当は基本給と同じ扱い」なのです。
また、たまに見かけるのですが、「インセンティブ」制度を導入している店舗があります。たとえば店長であれば、月の売上目標や利益目標を達成した、とか、予約商材で店舗の目標数をクリアした、などの頑張りをプチ賞与のような形で支給するところがあります。実はこれも、毎月支払われる要素が少しでもあれば、残業代の計算の基礎となります。この場合は先述の残業代計算とは違い、少し特殊で、「(インセンティブ÷月の総労働時間)×0.25×残業時間」で、残業代が計算されます。
反対に、残業代の計算の基礎とならない手当もあります。図表にもまとめていますが、「家族手当」「通勤手当」「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」のみとなります。ここにあたるもの以外の手当は、どのような名称であっても残業代の計算を行う際に基本給と合算したり、インセンティブのように計算をしたりする必要がありますので、注意しましょう。

025.36協定、出してますか?

Q: 店長です。最近、労働基準監督署の調査があり、36協定が出ていないので出してください、と言われました。36協定とは何か、出さないと何がダメなのか、教えてください。

A: 36協定とは、残業や休日出勤を行うために必要な届け出の通称です。これを出さないで残業などをスタッフにさせていると違法となり、罰則が科せられることがあります。

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<解説>
ニュースでも大きく取り上げられるようになってきた、「違法残業」の問題。「うちは小さいし大丈夫だろう」「自分は関係ない…」なんて思っていませんか?もしかしたら、知らないうちに違法残業を行っているかもしれませんよ?…と最初から脅すような言葉を言ってしまいましたが、これは脅しでもなんでもなく、本当のことなのです。
冒頭のQで出てきた「36協定」。読みは「サブロク協定」と言います。これは労働基準法第36条の内容から来ている通称で、本当の名称は、「時間外・休日労働に関する協定届」です。その名の通り、時間外(早出や残業:以下「残業」)と休日出勤を行う場合には作成し、店舗のある地域の労働基準監督署に出す書類です。協定とあるのは、店舗側(使用者)と働くスタッフ(労働者)の間で協議して決める、という意味合いです。
まったく残業も休日出勤もないよ!という場合は出さなくても良いのですが、24時間営業、しかも何が起こるかわからない店舗での業務において、残業や休日出勤は一般的に避けて通れないもの。最近では1分単位での勤務時間計算も強く言われていることもあって、出しておくに越したことはありません。

法律で決まった労働時間は、1日8時間、1週40時間。および週1回の休日の原則を設けることが義務付けられています。それを超えて働くためにはこの36協定の作成と届出が必須です。たった1枚の紙ですが、その意味合いはとても重要なものとなっています。そのポイントは4つです。

① 店舗ごとに出す必要がある
この協定の効果が及ぶ範囲は一つの店舗のみです。そのため、複数店経営をされているところは、各店舗で出しているかの確認も必要です。本社機能が店舗と別にある場合は、本社分も届け出ることになります。

② 残業時間の限度時間に注意
では、この協定届を労働基準監督署に出せば、際限なく残業などが出来るのか?その答えは「NO」です。協定に書かれた1日、1か月、1年間の残業時間、および休日労働の日数を超えて残業したり休日出勤をしたりした場合は、違法とみなされます。
ちなみに、1か月、1年間など、一定期間内で設定可能な残業時間には上限があります。例えば、「1ヶ月であれば45時間まで、1年間であれば360時間」と決められているのです。そのため、それらを超えた設定は原則できません。休日出勤についてもスタッフがしっかりと休める範囲内で、具体的に決めておく必要があります。

③ どうしてもその上限を超えてしまう場合は…
とはいえ、人の採用、定着化が難しい現在、1人のスタッフにかかる負荷が大きくなりがちです。そうなると、先に決めた時間以上の残業が発生してしまうこともあるでしょう。私の関与している店舗でも、月に60時間に達してしまう方がいらっしゃいます。こんなときの例外があります。それは、「特別条項」です。
特別条項とは、「臨時的に、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、従来の限度時間を超える一定の時間を延長時間とすることができる」ものです。つまり、月45時間が通常の設定だとして、どうしても超えてしまう事情がある場合は月60時間まで残業ができる、などの取り決めを行うことができるのです。しかし、あくまで「特別の事情」であるため、その事情が発生するのは1年の半分を超えないこととされており、恒常的に月45時間や年360時間を超える状態が続く場合は特別な事情としてみなされません。なかなか人が集まらない!という店舗にとっては、苦しい部分ですが…。

④ 一度届け出たら“永遠に有効”ではない
「わかった、では36協定を出そう!」となり、作成をして労働基準監督署に出したからといって、安心は禁物。36協定は一般的に1年に1回、更新をする必要があります。36協定の「期間」の欄で決めた有効期間が切れそうになったら、新しい協定届を作成し、スタッフの代表者と確認、署名をもらって、再度労働基準監督署に届け出なければなりません。もちろん、労働基準監督署からは「そろそろ期間が切れますよ〜」なんて連絡はないので、自分たちで管理します。

以上、36協定について見てきました。作成と届出を怠ると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられてしまうこともあります。