009.突然スタッフが店舗に出勤しなくなった!そのときの対応は?

Q:店長です。ある日突然、スタッフが来なくなりました。
突然シフトに穴もあけられるし、育てた恩を忘れて来なくなるなんて、とにかく怒りが収まりません。何か制裁を加えられませんか?

A: 制裁を加えることは一定の条件下で可能です。ただし、実施には注意点がいくつかあります。

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<解説>
突然、スタッフが出勤しなくなる…いわゆる「無断欠勤」や「バックレ」と言われる状況。もしかしたら、一度はされた経験がある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。かくいう私も店舗にありました。年末年始まで、笑顔で明るく「がんばりまーす!」と言っていた日勤スタッフが年明けに突然来なくなる、という経験。いつも話しかけると、ニヤニヤしながら「マジすか、それ楽しそっすね」と返してくれる夜勤スタッフとの突然の別れ。バックレの事実に直面すると、気持ちは一瞬驚き、切なくなりますが、だんだん怒りがこみ上げてきます。では、こうした行動をとったスタッフに対し、怒りの制裁を加えることは出来るのでしょうか。

例えば、よく聞く話では、「給料を払わない」とか「売上が下がったので損害賠償を請求する」というものがあります。また、何度かバックレを経験した店舗では、同様のことが起こらないよう「無断欠勤の場合は罰金◯◯円」と言った内容を入れた誓約書を入社時に交わすところもあります。これらが有効なのかどうか、という観点で話を進めていきます。

 

【給料を払わない、はOK?】

まず、結論から言うと、働いた分の給料は支払う義務が生じます。労働基準法第24条において、「全額払いの原則」という取り決めがあり、これはどのスタッフにも適用されるのです。そのため、仮にバックレを起こしたスタッフから「給料は払ってください」という連絡が来た場合には、支払わなければならないのです。支払い義務の発生している給料の請求期限は2年間です。

しかし、支払い方法は振込みによらなくても構いません。例えば、「給料を振り込んでください」と言われたときに、「払うので、店舗まで給料を取りに来てください」と伝えることは可能です。仮に2年間そのスタッフが取りに来ることがなければ、支払いの義務は消滅します。この場合、違法にはなりません。

突然いなくなるスタッフは、もしかすると制服や店舗から貸しているものを持っている可能性もあるため、例え顔を見たくない…と思ったとしても、その返却を兼ねて店舗に来てもらうように促しましょう。

 

【売上が下がったので賠償請求、はOK?】

売上が下がってしまうと、店舗運営や経営に支障をきたします。これについては、例えばスタッフのバックレにより、本当に致命的な売上減少につながってしまったとしたら、その証拠を提示することによって、スタッフへの賠償請求が可能になります。バックレは、民法第709条の「不法行為」などに当たる可能性があり、それによる損害を与えた側が賠償しなければならないのです。ただ、例えばシフトに穴が開いてしまって、少ない人数で店舗を回さないといけない…ということだけでは、売上減少やその他の損害を被ったことを証拠として提示することは難しく、賠償請求は難しいでしょう。また、スタッフのバックレにより、別の人を採用しなければならなくなった場合でも、給料の支払いが実質被ることはないため、損害とはなりません。

万が一、賠償請求を行うような場合であっても、給料から天引きを行うことは先の「全額払いの原則」により、許されません。

 

【無断欠勤時に罰金、はOK?】

例えば、スタッフが無断欠勤したとすると、その時間は当然ながら働いていないため、給料の支払い義務は生じません。ですが、無断欠勤をした場合に罰金を予定するような決まりを加えると、労働基準法違反となってしまいます(第16条「賠償予定の禁止」)。例えばこれを誓約書の中に組み込んで、入社時に結んだとしても、その部分は無効になってしまうのです。

しかし、実際に発生した無断欠勤についてのペナルティを科すということは一定の条件のもとで可能です。これは「減給の制裁」という規定によります。ただし、この場合でも、就業規則にそれを記載しておかなければ実施できませんし、減給の額もそれほど大きくは設定できないよう、法律で決まっています。バックレの場合は1回限りですから、わざわざ就業規則で取り決めているところは少ないでしょう。

 

バックレでは、他にも、「いつ退職とさせるのか」という疑問が生じることになります。これについては、やはり就業規則で、無断欠勤が何日続いたら自然に退職となる記載を入れておくと対応ができます。

 

ただし、バックレが発生する背景には、店舗での職場コミュニケーション不足であったり、無理な業務量を強いている状況であったりすることもあります。仮にそういう状況があり、それに対して店舗が何の対策も取っていなかった場合には、損害が発生したとしても請求が無効になることがあります。職場環境が原因でバックレが起こらないような職場を作っていくことが、何よりも大切ですね。

008.クレームを多発させる店長への対応とは?

Q:過去に同チェーンで店長経験があるということで新たに店長を採用したのですが、期待とは裏腹に動きが悪く、お客さまからのクレームが多発しています。このままでは信頼にも大きく影響してしまうので対処したいのですが、この店長に対してはどうすればよいでしょうか。

A:業務内容の明示や能力不足の判断基準はありますか?それらがない状態で最もやってはいけないことは、すぐに給与を下げたり、解雇をしたりすることです。まずはその店長と一度、現状と今後について話をしてみましょう。

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<解説>
面接時には「店長経験があります!」「20名のアルバイトを動かしていました」などと言って、採用後に働いてもらったら、どうも期待とは大きく離れた動き。さらに、お客さまからのクレームも連日のように発生する状態…。このようなときオーナーは思い通りにいかないことから、さまざまなイライラや不安が募るかもしれません。今回はこうした問題を、労務の観点から取り扱っていきます。
まず、こういうときに最もやってはいけないことは、次のようなことです。

①一方的に給与の額を下げる
例えば月額30万円で採用したが、動きが悪いこと、クレームが多発していることを理由に、一方的に月額20万円に減額することは、非常に危険です。減額の場合には、まず該当スタッフの同意が必須となります。さらに30万円が20万円へ、10万円減るにあたっての客観的な根拠、理由を示さなければなりません。「なんとなく…」というのは、あってはならないことなのです。
就業ルールをまとめた「就業規則」がある場合で、そこに減給に関する定めがあれば、原則はそちらに従い対応を進めていくことになりますが、一方的に行うというのは、最もトラブルになりやすいため、注意が必要です。

②一方的に解雇する
単に能力が不足している、クレームが多発する、などといった理由でスタッフを解雇すると、後にトラブルに発展することがあります。
例えば、このスタッフが店長経験ゼロなのに「5年以上ある」といって自分の経歴を大きく詐称して入社し、能力も伴わなかった場合は、事実を確認したうえで、懲戒解雇が有効となることもあります。しかし、スタッフは「労働基準法」や「労働契約法」などで守られている部分があるため、事実確認などをしないで一方的に辞めさせることはできないのです。

こうした対応のことを「労働条件の不利益変更」と言います。この不利益変更は、一部の有事の際を除き、経営者の独断で行うことはできません。

では、こうした場合にはどのように対応すればいいのでしょうか。
必要なことは、まず、当人や周りのスタッフから慎重にヒアリングを行い、問題となっている状況を客観的に捉えることが重要です。具体的にどういった問題が発生しているのか、それについてお客さまや他のスタッフはどのように感じているのか、などを聞き出し、まとめていきます。
また、重要な内容は書面で通知することも大切です。店長という重大な役割を任せるにあたり、オーナーから店長に期待することや任せる業務を明確にし、雇用契約書(労働条件通知書)や就業規則など書面と口頭で伝えます。その上で実際の動きを見ることではじめて、現状で何が不足しているのかが客観的にわかるようになりますし、店舗側もしっかりとスタッフに明示した、という証拠になります。
また、仮に、お客さまからクレームが発生したとして、その原因が鮮度確認漏れやレジ誤差など店舗側にある場合、店長に対して一方的に注意するだけでなく、再び同じミスを起こさないよう、発生内容と対策を書面でまとめておくことも重要です。その理由は、どれだけ店舗でクレームが発生したかを客観的に理解できる、というのはもちろん、店長の改善への意識がどれだけあるか、を計る指標の一つにもなるからです。例えば報告書が1ヶ月で5枚以上出ることが3ヶ月も続くと、改善への意識、あるいは能力があるのかどうかを判断する一つの証拠になりますが、何もなければ、店長が本当に能力不足なのか、ということすら証明できないでしょう。
最初に述べた不利益変更も含めて、法律に基づいた処遇を行う場合は、先の同意や公平なヒアリングに加え、こうした書面や記録の積み重ねがとても大切なのです。

もちろん、これらは、適法に減額する、解雇するという趣旨のものではなく、本来は一度採用をしたスタッフに最大限の動きをしてもらえるようにする、という意味で有効な手法です。最大限の動きをさせられるかどうかは、実はオーナーの意識と行動に大きく左右されます。日頃からスタッフとのコミュニケーションを欠かさないようにする、接したときの小さな違和感を見逃さない、勤務上のルールや役割の責任範囲はしっかりと明確にする、など、スタッフへの歩み寄りが、的確な労務管理につながるのは言うまでもありません。

007.店舗のスタッフ募集で年齢制限はかけられる?

Q:店舗のスタッフ募集にあたり、できる限り年齢の若いスタッフを採用したいので、年齢制限を設けたいのですが、それは可能なのでしょうか。

A:法律により、一定の例外を除き、募集時に年齢制限を儲けることは禁止されています。そのため、年齢を設けると採用活動ができなかったり、応募者などから反発が出たりすることがあります。もし、例外を適用させる場合には法律で認められた的確な理由が必要になります。

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<解説>
2月から3月は卒業のシーズンです。多くのスタッフが退職してしまう場合は、早期に募集をかけ、スタッフの減少に備えなければなりません。その際「出来るだけ柔軟に動ける人が欲しいな」と思うことは、とても自然な発想です。この背景には、シフトにたくさん入れる、あるいは年齢が若くスキル習得と成長が早い、機動力がある、などといった、複数の意味合いがあります。ただし、この中で、判断材料として気をつけなければならないのが、「年齢」です。

雇用対策法では、年齢に起因した制限を設けて募集をかけることを原則禁止しています。具体的に禁じられていることは、年齢により応募資格に制限を設けること、また、年齢によって採否を決定することです。例えば「20〜30代の人が欲しいな」というビジョンがあっても、それを素直に募集時の条件として反映させると、法律違反となってしまうのです。
また、夜勤シフトは納品量が多く体力が必要なので、あまり高齢になると業務をこなすのが難しいだろう…と考え、応募した方を年齢のみで判断し、不採用とするケースも違法です。
法律に違反しても、現状は禁固刑や罰金刑があるわけではありませんが、行政から注意を受けることになります。もちろん、それだけでなく、募集時の門戸が狭くなるため応募数が期待できない可能性がありますし、応募する側も「働きにくそうな店だな」「年齢で差別をする店なのかな」などと、よくない印象を持ってしまうでしょう。
当然ながら、年齢制限を設けたハローワークの求人票は受け付けてもらえません。また、民間の求人媒体でも、掲載を断られるケースもあります。ただ、店頭入口などに掲載する手書きの求人ポスターではどのような内容でも書き込め、ハローワークや求人媒体企業のように担当者のチェック機能があるわけではないため、実際にはオーナーや店長の正しい知識が、募集時のトラブルを防ぐことにつながります。

ちなみに、雇用対策法では例外として、次のようなケースにおいて、年齢要件を加味することが可能としています。全部で6つの例外事項がありますが、ここではコンビニエンスストアに関連するものに絞って見ていきます。

(1)定年年齢を上限として、その上限未満のスタッフを「期間の定めのない契約」(一般的には正社員)の対象として募集・採用する場合
(例として、65歳定年の店舗・企業が、65歳未満のスタッフを採用するケースなど)

(2)長期的にキャリア形成をはかる観点で、若年者など(おおよそ40歳未満、特に35歳未満を指す)を期間の定めのない雇用契約の対象として募集・採用する場合=いわゆる新卒のスタッフが対象

(3)国などの施策として、60歳以上や特定の年齢の雇用を促進することに照らし合わせて行われる募集

これらの例外により年齢要件を設けて求人を行う際には、必ずその理由を明確にし、応募者やハローワークなどの職業紹介事業者に事前に伝えなければなりません。コンビニエンスストアの業務は、年齢要件が設定可能な業種として登録されていないのです。

それでも、コンビニエンスストアの業務は、確かに体力が必要です。納品された商品を荷受けしてゴンドラやバックルームに運んだり、フライヤーの油を交換したり、清掃をしたりする中、体力的な面で課題を抱えている方は他の業務を検討する必要があります。しかし、人件費予算などで、多くの人員を割けないのもまた事実です。
そのようなとき、例えば、実際に20代〜30代のスタッフが多く所属をしている店舗や職場であれば、募集時の店舗の特徴として「20代〜30代のスタッフが多数活躍している職場です!」と伝えることは出来ます。活躍できるイメージをその世代の方に持ってもらうことで、「応募してみようかな…」という気持ちになるきっかけを作ります。
そのうえで、実際に応募があった際には、面接で年齢だけではなくその応募者の能力と店舗業務が合うかどうか、これまでの経験を活かしてさらに活躍をしてくれそうか、などという適性、あるいは店舗運営にかける想いをしっかり汲み取って業務に取り組んでくれそうか、という姿勢を見て、総合的に判断することが重要です。
コンビニスタッフの確保が難しくなっている昨今、まず募集の段階で門戸を広くし、年齢だけにとらわれない公平・公正な採用を行いましょう。

 

006.雇用保険未加入で「私は失業保険をもらえるんですよね?」とスタッフから言われたら?

Q:月末で退職するスタッフから「私は失業保険をもらえるんですよね?」と聞かれました。でも、当社は雇用保険に入っていません。どうしたらいいでしょうか?

A:急いで加入手続きを取ることが必要です。しかしその場合、最高2年までしか遡って加入することはできないことになっています。

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<解説>
オーナーが、長期で週20時間以上働くスタッフを一人でも雇う場合、必ず入らなければならないのが「雇用保険」です。コンビニエンスストアの場合、多くの店舗がこの要件に当てはまるでしょう。皆さまの店舗では、雇用保険に入っていますか?これに入っていないと、スタッフが退職したあとで、もらえると思い込んでいた失業保険を受け取れない事実が発覚し、トラブルになってしまいます。

雇用保険は主に、従業員が失業した際などに受け取れる「失業等給付」(「等」がついていることからわかるように、失業時以外のタイミングでも給付があります)、雇用機会の増大や環境の改善を行う事業所をサポートするための「雇用保険二事業」(主なものとしては、雇用関係助成金の給付など)のために存在する国の保険です。Q&Aにあった失業保険という名称は、本当はありませんが、わかりやすくするために今回はそのまま使用します。
雇用保険は先述の通り、週20時間以上働き、かつ、その雇用が31日以上続くと見込まれるスタッフを雇用する場合、事業所として入らなければなりません。そのスタッフとは、パート・アルバイト、正社員などのくくりは関係なく、要件を満たしたスタッフが対象となります。例えば、週に4日、休憩を除いて1日5時間勤務する契約を交わしたスタッフについては、雇用保険加入の対象になります。保険料は失業等給付の部分についてはオーナーとスタッフとの折半ですが、雇用保険二事業分の金額については、オーナーのみの負担となります。

ただし、国民年金のように一定の条件を満たしたら自動的に加入するものではないため、オーナーが自ら、店舗の所在地を管轄するハローワークで加入手続きを取ることになります。もし、入るものであるということを知らなかったり、つい忘れてしまったり…などで手続きを取らないでいると、そのままになって月日が流れてしまい、最終的にトラブルの元になっていってしまうのです。役所側もなかなか全部の事業所を洗い出して加入を指導できる状況ではなく、まずオーナー自身が気づいて対応していくことが重要となります。

では、店舗が創業以来雇用保険に入っておらず、その状態で退職するスタッフから、「自分は失業保険をもらえるんですよね?」という問い合わせを受けたら、どうすればいいのでしょうか。
まず、当然ながら現状では1円たりとも失業保険は出ません。なぜならば、雇用保険そのものにも入っていなければ、保険料も納めていないからです。だからと言って正直に「出ません」とスタッフに伝えて、スタッフがおいそれと納得するでしょうか。おそらく、その質問が出ている時点で、失業保険をもらいたいと考えているでしょうから、納得しないことが容易に想像できます。
そうしたときの救済策として、さかのぼって雇用保険の加入手続きを取ることが可能です。その場合は、管轄のハローワークでさかのぼり加入であることを伝え、必要書類を提出することになります。あわせて、雇用保険料を修正申告という形で納めることになります。そうすることで、失業等給付の受給資格も満たせるのです。
ただそれも、永遠にさかのぼれる訳ではありません。現状の雇用保険でさかのぼれるのは、最大2年間です。例えば皆さまの店舗で、10年以上も勤務している方が辞めることになった際に初めて、雇用保険の手続きをすることになったとします。その場合、2年分しか入ることができなくなり、結果、本来雇用保険に正しく入っていればもらえたはずの金額がもらえなくなります。ただし、雇用保険に加入していないのに、よくわからないまま雇用保険料をスタッフの給与から天引きしていた場合には、2年を超えてさかのぼり加入をすることは可能です。
これらの手続きは、放置すればするほど、提出しなければならない書類の数も増えていき、ますます面倒なものになります。また、再三入れと言われているのに、加入の手続きを取らない場合は罰則(罰金や禁固刑)に処せられることもあります。
スタッフとのトラブルになる前に、しっかり整備しておきたいですね。

 

005.派遣スタッフがフライヤーでやけど!

Q:派遣スタッフが店舗のフライヤーで大やけど!労災は?

A:派遣スタッフを雇用しているのは派遣元企業ですので、派遣元企業が労災手続きを行います。ですが、仮にそのフライヤーや店内備品の管理体制が著しく悪いことによって派遣スタッフが傷害を負ってしまった場合、派遣先である店舗が責任を負わされてしまうこともあります。

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<解説>

店舗の設備・機器の性能が向上し、提供するサービスも増えている今、お客さまの満足度もどんどん向上しています。しかしその反面、オペレーションの複雑化につながったり、スタッフが危険にさらされたりする可能性も高くなってきています。例えば、派遣スタッフが皆さまの店舗にあるフライヤーで大きなやけどを負ってしまったら…いったいどのような対応が求められるのでしょうか。今回は派遣スタッフの労災保険について見て行きます。

 

まず、労災保険とは、「労働者災害補償保険」の略で、スタッフが業務中、ないし通勤途中に負ったケガや労働がもとで病気になった場合に、治療費や生活補償のために給付される国の保険です。就業先となる場では、スタッフが安全に仕事できる環境を作り、維持する義務(安全配慮義務と言います)が課せられ、アルバイト、社員にかかわらず、スタッフを一人でも雇うと加入義務が発生します。保険料は全額事業主負担ですが、そこまで高くない上(コンビニエンスストアは1年間に支払った全スタッフの給与総額×0.0035 例は図表を参考)に、未手続きの場合は罰則もあるため、「まだウチ労災に入ってないよ…」というところはぜひ加入手続きを進めておきたいところです。段ボールやセロテープカッターで切った、などの小さなケガ程度であれば、わざわざ病院に行くこともないかと思います。しかし、大きなケガをすると病院を利用する可能性も高くなります。そうした際に、的確な情報がなければ右往左往してしまい、結果スタッフの命が失われる、ということもあり得るのです。

 

さて、派遣スタッフがフライヤーでやけどを負ってしまった場合の手続きについて見ていきます。派遣スタッフは派遣会社で雇われているので、派遣会社がそのスタッフの労災手続きを行うことになります。ただし、実際には勤務先で事故が発生するため、まず、派遣先である店舗が、派遣スタッフを近隣の「労災指定病院」に案内する必要があります。その後、派遣元となる派遣会社とやりとりを行うことになりますが、その際、労災事故の発生状況を派遣会社に報告することになります。また、出来る限り早く「労働者死傷病報告」という定められた様式(書類のこと。労働基準監督署に取りに行くか、厚生労働省のホームページからダウンロードできます)を記載し、店舗のある地域を管轄する労働基準監督署へ届け出ることになります。そして、そのコピーを派遣会社へ送るのです。いつ、どこで、どういった状況でケガが発生したのか、ということを細かく記載する必要がありますので、派遣スタッフと一緒にいた店舗スタッフがいる場合、彼らから詳細な事情を聴かなければなりません。その後は、基本的には派遣会社やその派遣スタッフが手続きを行います。

では、発生した労災事故は例えばこのとき、フライヤーやフライヤー周辺の管理状況が著しく悪く、派遣スタッフが「店舗の管理状況が悪いせいで自分はやけどをした」という申し出があった場合はどうなるのでしょうか。この場合、派遣先である店舗に少なからず責任が生じる可能性が出てきます。フライヤーのある店舗では、高温の油を使い商品を揚げたり、保温庫を清掃したり使用済みの油を新しい物に入れ替えたりします。その際に足元がゴミや備品だらけで歩きにくい環境だと、その備品につまずきケガをするケース、棄てたばかりの油の缶が無造作に置かれていることで、その缶を蹴ってフタが開き高温の油が大量に足にかかるケースなど、多くの危険が潜んでいるのです。そうした職場環境の整備や管理を怠っていた場合に派遣スタッフがフライヤーの油でやけどをしてしまったら、最悪の場合、派遣先の店舗に対し派遣会社や本人などから損害賠償を請求される可能性があります。仮にそれがケガではなく、死につながる事故になってしまったら…その額は何千万円にもなるのです。

もちろん、一概に店舗がその賠償を被るわけではなく、派遣スタッフの動きや派遣元である派遣会社での説明が十分だったかどうか、という点も見られていくため、実際に損害賠償が発生したとしても、派遣会社と店舗で過失相殺による減額もありえます。逆に、労災事故の報告を怠ったり、嘘の報告をしたりすると「労災隠し」、つまり違法行為となり、処罰の対象になってきます。しかし、最も大事なことは、こうした問題に発展しないよう、普段からケガややけどの事故が起こらないように、店舗環境を整備していくことなのです。

 

004.店長は管理職?残業代支給の対象?

Q:ある日、店長から、自分の残業代は支払われるのか?と聞かれた!店長は残業代支給の対象?

A:店長が労働基準法上の管理監督者であるかどうかを実態にそって判断し、対応することになります。

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<解説>

大手ファーストフード店に勤める店長が未払い残業代の裁判を起こし、有名になった「名ばかり管理職」という言葉。記憶に新しい、という方もいらっしゃることと思います。そして、それまで何も気にしていなかったことが問題として表面化しました。それは、コンビニエンスストアの店長は管理職なのか…という疑問。今では多くのオーナーや店長がこの疑問を持っていることと思います。そして、ここで言う管理職とはほとんどの場合、労働基準法上の「管理監督者」を指します。その管理監督者とはどういう立場なのかを紐解いてみましょう。

管理監督者は、経営者と一体的な立場で仕事をしている人のことであり、通常経営者が管理すべき労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されません。つまり、残業代(残業の他に早出の場合もあるので、通常は時間外割増賃金などと言う)を支払う、という概念がそもそも存在しないのです。これもあって、店長という肩書きがついた瞬間に、残業代を支払わなくてもいいんだ、という認識を持つオーナーが多いのですが、実は管理監督者かどうかの判断は、肩書きでははかれません。それでは、どのように判断していくのでしょうか。これについては次の①から③の判断材料をもとに、実態に即して見ていくことになります。

①経営者と一体的な立場で仕事をしている

②出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない

③その地位にふさわしい待遇がなされている

①の「経営者と一体的な立場」については、労働者としての身分を有しながら、経営者に代わって同じ立場で仕事をすることを指します。例えば店舗でスタッフ採用業務を行う店長の場合、採用の時期、人数、選考手順、面接の合否決定などをオーナーと一緒に決定、あるいは店長自身の裁量で行っている場合は、管理監督者になりうるでしょう。逆に、面接の権限はあるが、それ以外の要素をオーナーから指示を受けて実施している場合、あるいは最終判断をオーナーに委ねている場合などは、管理監督者とは言えない可能性があります。その他、売上計画作りや予算取りなどで、経営者と同等の権限があるかどうかなども見られます。管理監督者として判断されるためには、それ相応の職務権限が必要ということです。

②については、管理監督者の場合、時を選ばず経営上の判断や対応を迫られることがあります。責任者が出て行かないといけないクレーム対応やトラブル、システムの重大な不具合など店舗で発生する緊急対応などがその一例です。店舗にいなくても、店舗スタッフから電話がかかってくる可能性があります。そういう場合を想定して、勤務時間などを厳密に決めることができません。また、厳密に決められない以上、出退勤時刻は店長自らの裁量に任されていることが必要です。もし、遅刻や早退、欠勤をしたら給料がカットされる、というような契約になっていたら、それは管理監督者とは言えません。

③の「地位にふさわしい待遇」については、①や②のような立場であることから、給料やその他の待遇が一般の従業員と比較しても優遇されていることが必要です。仮に①や②の権限があったとしても、給料その他の待遇が一般の従業員と変わらない場合は、それだけで管理監督者ではない、と言い切ることはできないものの、管理監督者として見られる可能性は低いでしょう。

以上、3つの判断材料について見てきましたが、店舗(企業)によっても状況や条件が違うため、一律に管理監督者になるのかの判断を行うことはできません。しかし、この判断が曖昧なままだったために、在籍中、あるいは辞めた店長から突然残業代を請求され、トラブルになってしまった店舗もあります。一度トラブルが起こると、芋づる式に他の店長からも残業代を請求されたり、経営側として管理監督者性をどう証明するのかに時間がかかり、本業に支障をきたしたりする可能性が高まります。その結果、管理監督者でないと判断された場合、たとえ店長というポジションであっても残業代支給の対象になります。皆さまが関わる店舗の店長は、どのような状況でしょうか?店長や統括店長など、責任ある立場の採用時には、労働条件(ポジション、待遇、勤務時間の管理など)や職務内容(どこまで任せるのか、など)を明確にし、提示することが重要です。

以上、管理監督者の立場や判断について見てきました。店長がいくら管理監督者にあたるからとはいえ、全ての時間外手当がなくなるわけではありません。深夜勤務の場合は、深夜割増手当を支払う必要があります。また、何時間働いても良い、という考えは健康管理上の観点からよくありません。店長にオーナーの右腕として効果的に活躍をしてもらうためにも、労働条件をしっかりと整えておきましょう。

図表↓↓
管理監督者の判断材料:実態に即して総合的に見ることになる!

 

職務内容、責任と権限 経営者と一体的な立場で仕事をしている

(例)採用権限、経営計画、スタッフシフトの決定、昇給などの決定権限の有無など

勤務態様 出社、退社や勤務時間についての厳格な制限を受けていない

(例)遅刻や早退、欠勤時の扱い、店舗の常駐義務の有無など

待遇 その地位にふさわしい給料、その他の待遇がなされている

(例)基本給や役職手当が一般の従業員やパート・アルバイトと比較してどうか

※(例)の状態を見て、それ相応の権限や待遇があるからといって、すぐに管理監督者である、という判断がされるわけではないので注意が必要です。

003.休憩時間にスタッフが発注作業!その場合の賃金は支払う?

Q:休憩時間にスタッフが発注作業!その時間の給料支払いを求められたら払わなければならないのでしょうか?

A:性質により判断されることになるため、客観的なルールを定めておくことをお勧めします。

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<解説>

ある日の店舗。レジで発注作業をしていたスタッフが休憩時間になり「休憩開始を打刻」、その後発注端末を持ってバックルームへ移動。そのまま事務所の机に座り、ご飯を頬張りながら発注作業を続ける…という光景を目にしたことはありませんか?

発注は、いいか悪いかは別として、バックルームでもできる作業の一つです。

私も店舗勤務時には発注をしていましたし、今でも支援をしている店舗では休憩中に発注を行っているスタッフを見かけます。なぜ休憩時間に発注作業を行うのか、というと、理由はいくつか考えられます。例えば、「休憩時間中も行わないと自分のシフトの中で終わらないと判断した」という場合、他には「レジなど、お客さまや他のスタッフの影響を受けず、完全に自分のペースで進められる」という場合など、です。

 

では、休憩時間に発注作業、つまり仕事をした場合、給料は発生するのでしょうか。また、休憩時間に発注していたスタッフが、「自分は休憩時間も使って発注をしていた。給料を払って欲しい」と言ってきたら、給料を支払う義務が生じるのでしょうか。

 

それに回答するためには、まず、労働時間と休憩時間の定義から紐解いてみましょう。労働時間は、ある裁判がきっかけで「労働者が使用者の指揮命令(監督)下に置かれている時間」という通達が出されました。また、休憩時間とは「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保障された時間」です。これにより、休憩時間の発注がどういう性質のものであるかによって、労働時間となるかどうかが判断されることとなります。

 

まず、わかりやすい例で言うと、オーナー・店長がスタッフに対し「休憩時間を削ってでも全部発注して帰ってくれ」なんて言ってしまったら、仮にシフト表で休憩時間が明記されていても、労働時間、すなわち「使用者の指揮命令下におかれている時間」として判断されてしまう可能性が高くなります。これは、完全にスタッフへ指示をしていますよね。

ただ、直接的な指示をしなかったとしても労働時間と判断されてしまうケースも考えられます。それは例えば、スタッフが担当している発注の箇所が多く、かつ終業時間までに担当箇所を全て終えなければならない、という暗黙のルールが出来上がっている場合です。この状態を「黙示の指示」といい、休憩時間を削ってでも発注をしないと終業時間に間に合わない、ということが誰の目から見ても明らかで、かつ、オーナー・店長がそれを把握しているとき、たとえスタッフに対し何も言わなかったとしても、休憩中にスタッフが行った発注時間は労働時間となる場合があります。こうなったら、給料の支払いが義務として発生します。しかも、もしその時間が残業時間(正式には「時間外労働」と言います)に該当するのであれば、時間外割増賃金を払わなければならないのです。

逆に、業務量も特に多くなく、じゅうぶん労働時間内で発注を終えられるのに、スタッフが「レジ接客をしながらだと気が散って発注に集中できない、だから休憩時間にやってしまおう」と自ら考え休憩中に発注を行った場合は、スタッフが給料を要求してきても、直ちに支払う必要はないでしょう。

 

ただ、現実的にはそう簡単には判断できません。というのも、日によってお客さまが変わりますし、急に店舗が混雑することもあるからです。そのため、客観的判断が行いやすくなるよう、就業規則などで明記しておくことをお勧めします。労働時間と休憩時間の意味をハッキリとさせておき、かつ休憩時間やシフト外の時間で勤務が必要になる場合には、事前にオーナー・店長(所属長)の許可を得なければならない、などと取り決めます。もちろん、これらの規則を作ったら、必ず誰もが見られる場所におくなどして周知をはかりましょう。現実的には実態に即して判断されるため、規則に定めたから何でも有効になる、とはいきませんが、客観的判断の助けにはなります。

 

ちなみに休憩時間は、1日の勤務時間が6時間を超えたら45分、8時間を超えたら60分、少なくともスタッフへ与えなければなりません。そのため、休憩時間を削って行った発注業務が労働時間になる場合は、本来その日の別のタイミングで削った時間分を休憩として与えなければならないので注意が必要です。

 

責任感の強いスタッフほど、悪気なく自分の身を削ってでも任務を遂行しようとします。だからと言って「あのスタッフは真面目だから休憩時間を削って頑張ってくれている」と安心してはいけません。小さなことからトラブルに発展させないためにも、「あってないような休憩時間」が常態化している場合は、就業規則やシフト表に明記し、休憩時間はしっかりと体を休めるよう、スタッフに伝えておきたいものです。

 

002.「有休を使わせてください」と言われたら拒否できる?

Q:スタッフから「有休を使わせてください」と言われたら拒否できるのか?

A:有給休暇(有休)は労働者であるスタッフの権利なので、取得することそのものへの拒否はできません。ただし、状況によっては有休取得の時期をずらすことは可能です。

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MANA-formation https://community.camp-fire.jp/projects/view/409762

 

<解説>

オーナー、店長の皆さま。

あるとき突然、店舗のアルバイトスタッフから

 

「有休を使いたいんですけど…」

 

と言われて、ドキッとしたことはありませんか?また、思わず「それはムリだよ!」「アルバイトに有休なんかないよ!」と拒否をしてしまったことはありませんか?実は、そうした対応には多くの問題が含まれていることがあるのです。今回は、有休にまつわる対応について確認していきましょう。

 

そもそも「有休」というと、一般的には「年次有給休暇」のことを指します。年次有給休暇(以降、「有休」で統一)は本来、労働の義務がない日(休日)以外にその義務を有給で免除することで、身体や心の休養を取ってもらう…という意味合いがあり、労働基準法で保障されています。

有休は、店舗や本社など事業所に入社して6ヶ月後、ちゃんと出勤していれば、具体的には8割以上の出勤率で権利が自動的に発生します。その後も、入社後から1年6ヶ月、2年6ヶ月…といったタイミングで、条件を満たせば発生します。これは、正社員、契約社員、パート・アルバイトなど、名称に関係なく採用されて働く方全員が対象です。

発生する有休の日数も労働基準法で最低ラインが決まっています。例えば週30時間以上、あるいは週5日以上勤務している場合、入社後6ヶ月は10日で、その後、1年ごとに条件を満たせば11日、12日、14日…と増えていきます。ただし、週の勤務日数が短いスタッフの場合は、発生する有休日数もその分少なくなります(図表参照)。また、有休が発生後、その権利を使える期間は2年なので、2年経っても消化できなかったものについては、その権利が消滅します。

有休は、そうして法律で保障された労働者の権利ということもあり、通常はスタッフのタイミングで消化することになります。そのため、有休の権利を持つスタッフから「この日を有休にしたい」と言われた場合、その日がそのスタッフにとってもともと休日の予定でない限り、オーナー、店長は拒否することはできません。たとえ、有休を取る理由が「友達と遊ぶため」であっても、です。有休を使うことに、理由は関係ありません。

しかし、店舗がクリスマス、年末などの書き入れ時、あるいはスタッフシフトが満足に埋まっていない日に「有休で休みたい」と言われたり、同じ日に出勤するスタッフ複数名から有休消化を申し入れされたりすると、店舗の運営ができなくなってしまいます。そうしたときには、有休の取得時期を別のタイミングに変更してもらうよう、話すことができます。これを「時季変更権」といい、オーナー、店長に許された権利です。ただし、慢性的に人が足りていないから、とか、年中忙しいからどの日も有休は使えない、というのは、時季変更権の理由にはならないため注意が必要です。

 

それでは、実務的にはどのように有休の対応を行っていけばよいのでしょうか。

まず、スタッフの有休がいま何日権利として発生しているのか、ということを確認することが必要です。通常は入社後6ヶ月経過し、かつ、8割以上の出勤で初めて発生することになります。また、図表のとおり、シフトに入っている度合いで有休の発生日数も異なります。それらを正しく把握することがオーナー、店長には求められます。

そして、原則はスタッフが申し入れてきたタイミングで有休を取れるよう、店舗側が努力をする必要があります。そのスタッフの代わりに他にシフトに入れる人が本当にいないのかどうか、一人減ることで本当に運営が立ち行かなくなってしまうのかどうか、を具体的に検討し判断することになります。ただこれは、有休を取得するスタッフにできる限り早めに申告をしてもらう(1週間前〜1日前申告などをルールとして決めておく)、代わりに出勤できるスタッフを探す努力をしてもらう、さらに業務の引継ぎが必要な場合はしっかり行ってから休んでもらう、といった協力を事前に就業ルールなどで取り付けておくことで、店舗側の負担は多少軽減できるでしょう。

こうした努力を講じても店舗運営に支障をきたすと判断した場合には、時季変更権を使うことになります。ただこれも、有休を申し入れてきたスタッフに対し代わりの日や時期を指定する必要はなく、単に「その日はこういう事情だから有休は難しい」と伝えればOKとされています。

有休が本来発生していることをオーナー、店長が知りながら、それを隠してスタッフに伝えない…といったことをしていると、あとで大きなトラブルに発展してしまうこともあります。それぞれの権利を有効に行使行できるよう、普段からスタッフとの就業ルールを定めておき、こまめにコミュニケーションをはかっておきたいものです。

 

【プロフィール】
安 紗弥香(やす さやか)
Office38代表。コンビニ社労士。ディズニー、コンビニ本部2社でスタッフトレーニングや加盟店の研修に携わった経験から、コンビニ、企業の労務管理や人材育成のアドバイスを行う。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。

 

001.試用期間中のスタッフへ「来週から来なくていいよ!」と言ったら?

Q:試用期間中のスタッフへ「来週から来なくていいよ!」と言ったら…?

A:トラブルの原因になります。解雇に相当するような状況がなければ、解雇は難しいでしょう。

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<解説>
「試用期間」という言葉を、一度は聞かれたことがあると思います。また、その期間を実際に経験した方や、スタッフ採用時に設けている、というオーナーさん、店長さんもいらっしゃるでしょう。皆さまは、あの試用期間の本当の意味をご存じでしょうか。
試用期間とは、採用する側にとっては働く人の性格、勤務態度、作業能力が求める基準にあるかどうか、採用される側にとっては職場が自分に合っているかをそれぞれ見極める期間です。そこは皆さまも想像しやすいと思うのですが、この試用期間、実はどの法律にも詳細な記載がありません。なので、意味合いがよくわからないまま使っていると、採用側と雇用側でトラブルに発展することも多いのです。その中で最も多いのが「試用期間と解雇」に関するものです。
ある店舗で、こんなことがありました。
———————————
入社して3か月、試用期間終了を今週末に控えた社員スタッフAさんは店長のMさんに呼び出され、こう言われました。

「君はレジのミスが多かったから、来週から来なくていいよ」

Aさんは驚きました。過去にレジのミスが何度かあったのは認めたものの、働き始めて1か月を超えたところからそれも減っていたし、注意も受けなくなっていました。そして、試用期間がそろそろ終わる、と思っていた中で突然の解雇宣言。AさんはM店長に「そんなの聞いたことない」と抗議しました。すると、M店長は、
「君はまだ試用期間でしょ。試用期間は本採用ではないので、こうなることは仕方ないよ」
の一点張り。Aさんはそのまま解雇を余儀なくされましたが、解雇は不当だとしてM店長を訴えることも検討しています。
———————————
さて、M店長の対応は非常に危険です。では、どこに問題があるのでしょうか。それは、次の2点です。
①ルールが明確でないまま、店長の一存で解雇を行ったこと
②「解雇予告期間」を設けなかったこと
まず、①は、店長の一存では決められません。誰の目から見てもわかるルールを事前に決めておく必要があります。少し専門的な話になりますが、具体的には、試用期間の有無や期間、試用期間後の本採用をしない場合の判断基準などについては「就業規則」(店舗で働く際のルールを記したもの)や採用時の「雇用契約書」などで、スタッフへ明らかにすることが必要です。しかし、Aさんの店では、本採用をしない場合の判断基準がどこにもありませんでした。
Aさんは、働き始めて何度かレジのミスがあったのは認めていますが、時間の経過とともにそれも減っています。それ以降、特に注意を受けることもなく3か月の試用期間を終えようとしていたので、問題なく本採用になる、と思っていたのでしょう。
次に②ですが、「解雇予告期間」とは、会社(店舗)がスタッフを解雇する場合、少なくとも30日前に解雇を予告する必要がある、というものです。労働基準法上には「試みの使用期間」という、入社してから14日間は解雇予告期間を設けず即時解雇できる期間があると定められていますが、Aさんの場合、その期間はすでに過ぎており、しかもこの週末には試用期間が終了する予定でした。その直前に「もう来なくていいよ」という話をしても、30日を切っていることから、これはできないのです。もし、30日を切った状態で解雇を行う場合は、解雇予告手当(平均賃金)を支払わなければなりません。以上の2点がまずクリアできていないので、Aさんの解雇は認められない、ということになります。
では、この2つの条件を満たせば解雇できるのでしょうか。もちろん、そう簡単にはいきません。試用期間は本採用を見極める期間とはいえ、雇用契約は成立しています。よほどの理由がない限り、難しいのが実情です。
例えば、過去の裁判例を見ると、①重大な経歴詐称、②業務がまったくできないレベルの能力不足、③勤務態度が極めて悪く、店舗の運営に支障をきたす状態、④遅刻や欠勤をかなりの頻度で繰り返す状態、⑤極めて重大な健康上の問題がある場合、などがあった場合には検討することも出てくるでしょう。しかし、そうでないと、現実的には厳しいのです。詳しくは皆さまのお近くの専門家にお問い合わせいただくのが一番ですが、いくら試用期間だからといって、スタッフを軽く扱うことはできない、ということを知っておいていただきたいと思います。
むしろ、そうしたことにならないように、面接時や採用時に情報の正確性に気を配る、あるいは普段からこまめにコミュニケーションをとり、変化に気づくなどして、試用期間のスタッフが早期に業務を習得し、一人で対応ができるようにフォローしていくことが大切です。

 

【プロフィール】
安 紗弥香(やす さやか)
Office38代表。コンビニ社労士。ディズニー、コンビニ本部2社でスタッフトレーニングや加盟店の研修に携わった経験から、コンビニ、企業の労務管理や人材育成のアドバイスを行う。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。